兵庫県宝塚市で07年1月に起きたカラオケ店火災で、亡くなった少年3人の遺族5人が「行政が査察などを怠った結果、ずさんな防火態勢が長年放置された」などとして、宝塚市や当時の店の所有会社(同市)らを相手に計約3億円の損害賠償を求める訴訟を29日、神戸地裁に起こした。原告側代理人弁護士によると、防火態勢の不備をめぐって行政の不作為責任を問う訴訟は異例という。(根岸拓朗)
訴えたのは、いずれも長男を亡くした宝塚市の大本義忠さん(54)と田中博さん(51)、平嶋秀次さん(38)ら。被告は宝塚市と所有会社のほか、同社の役員夫婦、元経営者男性(刑事裁判で実刑判決)と元従業員の妻、元従業員の女性(同)。
訴状によると、同店は89年12月、市火災予防条例で義務づけられた「遊技場」としての届け出をせず、2階建てカラオケ店として営業を始めた。その後、同店は消防法で定める避難誘導灯や非常ベル、消火器などを店内に設けず、07年1月20日夜、元従業員女性が1階で調理中の鍋から出火。2階客室にいた少年3人が一酸化炭素中毒で死亡し、女子中学生ら5人が負傷した。
遺族側は、店側が91年に敷地内に事務所を新設しようとした際、宝塚市建築指導課の職員が現地調査をしたほか、地元消防署員が客として来店したり、市教委が青少年の立ち寄り先として見回ったりしていたと指摘。「市は遊技場としての届け出を受けていなくても建物がカラオケ店ということを把握できる状態にあった。それにもかかわらず査察や防火設備の設置命令をせず、防火態勢の不備を十数年放置した」と主張している。
当時の店の所有会社に対しては、防火設備のない危険な状態を漫然と放置したと指摘。元経営者には、従業員の消火訓練などを実施しなかった過失があるとしている。
中川智子市長は「訴状の内容を十分に検討して、適切に対応してまいります」としている。
◇
〈宝塚市のカラオケ店火災〉 07年1月20日午後6時半ごろ、兵庫県宝塚市安倉南2丁目の2階建てカラオケ店「ビート」の1階で調理中の鍋から出火。2階客室の田中真さん(当時18)、平嶋優樹さん(同17)、大本泰史さん(同16)が死亡し、女子中学生ら5人が負傷した。県警は1月、調理をしていた元従業員の女性らを業務上過失致死容疑などで逮捕。神戸地裁は同10〜12月、女性に禁固1年6カ月、元経営者男性に禁固4年を言い渡した(いずれも確定)。宝塚市側の刑事責任について、県警は「市条例に基づく届け出を受けておらず、防火態勢の不備をチェックできなかった」として立件していない。
(朝日)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200906290052.html